24–25 Aug 2023
Kavli IPMU, Kashiwa, Japan
Asia/Tokyo timezone

講義資料(presentation material)

アンケート結果(2023.9.18掲載)ここをクリックすると開きます

講演者、タイトルとアブストラクト、プロフィールを掲載しております。

招待講演

石原安野(千葉大学国際高等研究基幹、ハドロン宇宙国際研究センター)

「高エネルギーニュートリノで見る新しい宇宙の姿」

光では見えない宇宙はどのような姿をしているのでしょう。宇宙には、人間には作り出せないほど大きなエネルギーを持つ宇宙粒子が飛び交っていますが、その生成の現場を直接観測することはこれまでできていませんでした。その直接観測を可能とするのがニュートリノです。本講演では、南極点にある巨大ニュートリノ検出器である「アイスキューブ」によって観測する高エネルギーニュートリノで探る高エネルギー天体観測の進展について話します。

プロフィール

千葉大学国際高等研究基幹、ハドロン宇宙国際研究センター教授。2004年テキサス大学オースティン校PhD。ウィスコンシン大マディソン校でのポスドクや千葉大での学振RPD等を経て現職。第37回猿橋賞、第65回仁科記念賞。現在は朝日新聞の書評委員や日本物理学会の理事等を務める。

 

Sylvie Paycha*(ポツダム大学)録画 スライド
「The short story of a growing touring exhibition」
The story begins more than 10 years ago, when I was asked to deliver a talk on women in mathematics in Konstanz and decided to present 10 women of mathematics I had met around the world, thereby adopting a subjective point of view on the world of mathematics.  After that, subjectivity became an essential feature of our touring exhibition, with portraits of women of mathematics made by the photographer Noel Matoff and interviews I carried out with the portrayed women.

 

加茂倫明(株式会社LabBase)録画 スライド

「研究者のための情報発信とサイト作成の手引き」

研究者にとっての情報発信の重要性がしばしば語られますが、そもそも研究者は誰に対して、どういう目的で情報発信するのがいいのでしょうか。またその結果、研究者はどのようなメリットを得られるのでしょうか。本講演では、研究を取り巻く各ステークホルダー(学生、研究者、企業、一般市民)の声をもとに、研究者が情報発信を行う上で重要なポイントを話した上で、工数をかけずに情報を各ステークホルダーに届けられるサービスを紹介し、実践的なサイト作成ガイドを行います。

※ iPad、スマホでも対応できるようにする予定ですが、できるだけパソコンをご用意ください。

プロフィール

1994年京都生まれ。大学教授の父親の影響で、幼少期は数学者を志す。 東京大学工学部在学中の2016年に、研究者のキャリアや異分野融合/産学連携に課題意識を持ち、その解決のために株式会社LabBase(旧POL)を設立。 国内理工系修士博士の約半数が利用する「LabBase就職」を中心に、「LabBase転職」、「LabBase研究室サーチ」など、研究領域のサイロ(分断)を解決するサービスを提供している。
 

村山斉(UCバークレー・東京大学カブリIPMU)

「素粒子・宇宙、数学とランダムウォーク」

素粒子や宇宙の研究は物理学の対象ですが、ときどき今まで分野で使われていた理論では説明できないことに出会います。そのときに、新しい数学の言葉を使うことで問題が「すっ」と解けることがあります。一つは物性物理、一つは素粒子物理で私の経験した例をおはなしします。それと関連して、希望していた一つの分野でずっと研究することがうまくいかなった経験をふりかえりながら、ランダムウォークすることで却って研究の幅がひろがり、新しい言葉や新しい問題に出会うことができてよかった点にも触れます。

プロフィール

素粒子物理理論。1991年東京大学理学系研究科物理学専攻博士。2000年よりカリフォルニア大学バークレー校教授(現職)。2007-2018年カブリIPMU機構長。2019年より東京大学特別教授。2002年西宮湯川記念賞、2016年カムランド実験のメンバーとして基礎物理学ブレークスルー賞。すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器チームの主任研究者、アメリカ素粒子物理プロジェクト優先位づけパネル議長。

 

中筋麻貴(上智大学理工学部・東北大学大学院理学研究科)録画 スライド

「格子を用いて見える関数の性質 - Schur関数とゼータ関数への利用」

本講演では,組合せ論的アプローチに用いられる2種類の格子の応用について紹介する.前半では,2次元の格子模型で作られる6-vertex modelと呼ばれる結晶格子の頂点にある種のウエイトをつけて,その挙動を考察することで得られるSchur関数の性質について述べる.後半では,2次元格子の格子路にゼータ関数に関連するある種のウエイトをつけて,これらを数え上げることで得られる関数の組合せ論的性質について述べる.

プロフィール

上智大学理工学部教授,東北大学大学院理学研究科教授(クロスアポイントメント).慶應義塾大学から博士(理学)を取得後,私立中学高等学校非常勤講師,日本学術振興会特別研究員PD, 米国スタンフォード大学Research scholar, 北里大学一般教育部講師,上智大学理工学部准教授を経て2021年4月より上智大学現職.2022年9月より東北大学現職.専門は解析数論(ゼータ関数論)と組合せ論的表現論.2012年より「数論女性の集まり」世話人に従事.研究の傍ら,表千家茶道講師の資格を取得.2021年に上智大学表千家茶道部を創部し,顧問・講師を努める. 

 

立川裕二(東京大学カブリIPMU)録画 スライド

「理論物理から新しい数学をとりだすということ」

理論物理は、物理の実験や観測の結果を説明するためにある、というのが元来の姿でしょうが、理論物理から新しい数学的結果が取り出されることが時折起こります。この講演では、講演者の個人的経験も交えつつ、いくつかの例を説明してみたいと思います。

プロフィール

カブリIPMU 教授。2006年に博士号を取得、数年間アメリカのプリンストン高等研究所でポスドクをしたのち、2010年から東京大学で教員、2016年から現職。日本の素粒子理論・弦理論では、性別比が非常にかたよっており、女性の大学院生を指導したことがありません。どなたか、私の研究室を志望してくだされば良いのですが…

 

***ショートトーク***

松本萌未(東北大学)スライド
「原子核系における大振幅集団運動の非経験的記述」
原子核は陽子と中性子(まとめて核子)で構成されている量子多体系である。原子核系においては、核分裂をはじめとして「多くの核子が一斉に運動する」ことが特徴的な現象が数多くあり、このような集団運動を個々の核子の自由度から記述することは重要である。従来の研究では、集団運動のモードをあらかじめ指定する研究が広く行われているが、この手法では、集団運動の方向の選択に経験的な部分が存在しており、従来の計算が最適であったかは非自明である。そこで、本研究では、既存の理論を拡張し、非経験的に記述できるようにした。講演では、この手法を用いた原子核構造の計算について紹介する。

伊藤歌那(東京工業大学情報理工学院・理研AIP)録画 スライド
「ロジャーズ・ラマヌジャン型恒等式とアフィン・リー代数の関係性について」
ロジャーズ・ラマヌジャン型恒等式とはポッホハマー記号と呼ばれる記号を用いて、ロジャーズ・ラマヌジャン恒等式のような形の(無限和)=(無限積)で表される恒等式の総称である。Lepowsky-Wilsonによる研究以来、アフィン・リー代数の各標準加群からロジャーズ・ラマヌジャン型恒等式や整数の分割定理が得られるという期待がある。それに関連してA^{(2)}_{奇数}型レベル2の場合に焦点を当てた講演を行う。

鈴木智子(東京大学カブリIPMU)スライド
「JWSTとALMAで明らかにする銀河形成最盛期における銀河の構造と進化」
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)はそのかつてない感度と空間分解能で遠方宇宙の銀河の持つ構造を詳細に調べることを可能とした。本講演では、最新のJWSTのデータから得られる銀河の内部構造の情報と、大型の電波干渉計ALMAから得られるガスの情報を組み合わせることで、銀河形成最盛期と呼ばれる時代における銀河の構造成長の様子とそれが星形成活動性やガスの性質に与える影響について調べる研究を紹介する。

高橋悠貴(カリフォルニア大学バークレー校)録画 スライド
「ハムサンドイッチの定理と高次元への持ち上げによる一般化」
ハムサンドイッチの定理をはじめとする質量分割に関する定理は、R^d上の測度をより高次元の空間に持ち上げ、その高次元空間を分割することによって証明されてきた。この講演では、この方法を多面体面(polyhedral surfaces)への持ち上げに拡張し、平行超平面によるR^d上のd+1個の測度、および同心球によるR^d上のd+2個の測度の等分割の存在の証明を紹介する。

渡邉真莉(産業技術総合研究所 工学計測標準研究部門 幾何標準研究グループ)
「幾何形状測定の精度評価手法の開発」
近年,3Dプリンティング等の加工技術の発展により,もののかたちはますます複雑化している.設計通りに形状が加工されているかを検証するためには,加工された幾何形状を,接触式三次元測定機やX線CT等を用いて,精度良く測る必要がある.本研究集会では,幾何形状測定の精度保証に向けた取り組みについて講演する.

長谷川泰子(東京慈恵会医科大学)
「様々な分野におけるアイゼンシュタイン級数の応用」
数学のみならず、物理学や天文学において、アイゼンシュタイン級数がどのように応用されているかを最近の研究成果を含めて説明します。

近藤恵夢(奈良女子大学)録画 スライド
「非増加関数に対する重み付きHardy型の不等式について」
今回述べるHardyの不等式とは、1915年にG. H. Hardyによって導入された、関数の平均に関する不等式である。今回はこの不等式の一般化や類似した形を紹介していく。これは森藤紳哉先生(奈良女子大学)との共同研究である。

成田佳奈香(東京大学)スライド
「QSOに対するシルエットでみる”電波暗黒雲”の構造・運動・化学組成」
星形成の母胎である分子雲は銀河のバリオンサイクルをつなぐ重要な天体である。分子雲の進化は分子雲の構造と状態と化学組成の時間変化で記述される。星形成が始まり自己重力的な安定化が効く前の衝突励起の卓越しない分子雲(”電波暗黒雲”)にも構造や運動状態、化学組成は星形成の初期条件として重要である。今回は銀河面上の電波で明るいQSOを背景としたミリ波吸収分光に関するサーベイの結果を報告する。